エントリーナンバー1 田島剛三

2026年9月20日日曜日

キンドル小説 きんもくせいが香る頃 昭和のやくざ 昭和の話 登場人物帖

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「小説・きんもくせいが香る頃」より

【私の中のやくざたち列伝】エントリーナンバー1 田島剛三




任侠指数 ☆☆☆
着火指数 ☆☆☆☆☆
暴れん坊指数 ☆☆☆☆☆
悪酒指数 ☆☆☆☆☆
人情指数 ☆☆☆

この男、田島剛三と申しまして。

チンピラ稼業をしていた新宿から故郷へ戻り、
いよいよ本格的な極道の道を歩み出した男でございます。

着流し姿で、晒を巻き、いかにも昭和のやくざらしい風体。

ただし、いかんせん酒癖――いや、悪酒がすぎた。
酒が入ると着火が早い。

 そして、ある晩。

 ご自慢の日本刀を持ち出し、
妻が経営する店で、ご近所の旦那衆に、気分よく日本刀講習会。

 本人としては、おそらく、自慢の日本刀、
きらりと光るその刃先をみせたかったのえしょう。

 ところが、その数時間後。 

 お供をしていた子分がキレて、ご自慢の日本刀で斬り殺されてしまったのでございます。昨日今日、寄り付いたばかりの子分だったらしく、そんな浅い関係の相手をたまたま、お供にしたのも珍しいことでございました。


田島に強く叱責され、キレてしまい発作的な行動だったようでございます。

切り殺されるとは、なにか因果でもあったのでございましょうか。

そして、飲み屋が並ぶ路地裏で倒れ、冷たい雨の中、

そのまま命を落としてしまったのでございます。

ほんとうに映画のワンシーンのような出来事でございます。

刀を振り上げた、この若い子分が、出所後、人生をどう生きたかは誰も知る由もございません。「やったらやりかえす」なんて、年がら年中、すごみをきかせまくって、バッファローのようにかけこんで仇をとる高倉健も松方弘樹も、ほぼ実在しませんから……。

酒が身を持ち崩す……とは、昔から申しますが、この方の場合は身を持ち崩すどころではございませんね。

命まで失ってしまいました。

何ともまあ、あっけなく、そして因果な最期でございます。

威勢がよくて、喧嘩っ早くて、酒が入れば面倒なおっさんになり、結局、極妻が怒鳴りつけて家に帰すのが常であったようでございます。


この晩も、若い衆を怒鳴りつけた、そのいきさつをどや顔で語っていた田島。父に窘められたばかりでございました。

「そんなに、わけもなく当たり散らしていたら、しまいにゃ、おまえ、自分の若い衆に背中からやられるぞ」

やられました。

冗談が現実になってしまった例。

父とは、竹馬の友
いわゆる幼馴染みのわんぱく仲間でございました。

最後には自分の性分が、自分自身へと返ってくる。
これは、まぎれもなくこの世の因果の法則でございます。

田島剛三という男を思い出すと、
私はどうしても最後にこの一言をつけたくなります。

酒は、ほどほどに。

 しかし、なにも殺さなくても・・・とは思いますけど。

いきなり、ハードボイルドなところからエントリー。

序列、この頃は、第一位(その前にふたりいた)だったので、一番目に挙げてみた次第。

天井の明かりにかざされた、きらりと光る日本刀は、本当に美しかった。
素直に子供心にそう感じたものだった。

「田島のおじちゃん、そんなによく切れるなら、さっき、焼き芋屋さんから買ってきた焼き芋切ってみて!もってくるね!」

 台所から焼き芋をもってきた時には、田島のおじちゃんは、にこにこと笑いながら、「おじちゃんが綺麗に皮剥いてやろう、どれどれ…」
ということで、
きらりと光る自慢の日本刀で、焼き芋を、スパッと切る妙技はみられなかった。

金歯がきらりと光る口元、ドスの利いたしゃがれ声で私の顔を覗き込み、優しい言葉をかけてくる、60年以上も前のあの姿。いまでも時折、思い出す。

 連想しやすいようにあえて、俳優さんに喩えるならば、「仁義なき戦い」に出演していた松方弘樹さん。あの役のあの雰囲気に近いかもしれない。

そして、時代も、実は、あの頃にかぶってる。

※本記事に登場する人物名・団体名は仮名または創作上の名称です。実在の人物・団体とは関係ありません。内容は、実際に見聞きした出来事をもとにしていますが、一部再構成した部分も時折あります。

エントリーナンバー1から、いきなりハードボイルドな、『皆さんの連想を裏切らない眉を顰める記事内容』になったかもしれませんが、全体を通して、このようなテイストの出来事がメインの小説ではありません。

しかし、欠かせない登場人物なのでエントリーさせました。


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【The World of Showa Sonata】No1-e

昭和という時代__。 表舞台に立つ者と、その陰で静かに生き抜いた者たち。政治の表にいた人達、その裏にいた人たち。
命を投げ出して守った人たち。不撓不屈の不退転で再生していった人たち。居場所を失った人たち。二度と立ち上がれず忘れ去られた人たち。夜の世界で生きた光る女たち、うずくまる女たち。バブルにおぼれて消えていった人たち。貧しさに押し流された家族。心の居場所を失った人たち。誰にも語られなかった生活の痕跡___。

華やかさでも、暴力でもなく、ただ「人」の温度が熱かった、温かかく、時に残酷で、熱く灼熱の太陽のような昭和の断片を、書き続けています。

これは私自身が見てきた人々の奏鳴曲(ソナタ)であり、昭和という時代の協奏曲(コンチェルト)でもあります。
ひとつひとつの旋律を、ひとりひとりのソナタの旋律のように執筆中。

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