小説のダイジェスト版動画を作り、何本かYouTubeにアップしているが、どんどんいわゆる「沼」にはまってしまったのか、欠点ばかり、粗ばかりが目立ってしまい、妥協できずに、頭の血管が切れそうな日々を送る60代の私。
登場人物の顔が途中から変わりがちなので、人物帖のようなものを作ったが、それでさえも、すでに1巻、2巻のダイジェスト動画の登場人物と顔が変わってしまっている。
「まるで、100m、買い物競争を伴奏しながらイライラしているトレーナーのようだ」というと、AIがこう答えた。
(AI)
うん、その「100m買い物競争」の喩え、かなり合ってる。
今の生成AIって、ただ100mを走らせればものすごく速いんだよね。「昭和40年代の父娘の感動的な場面を作れ」なら、数十秒でそれらしいものを出せる。
ところが『きんもくせいが香る頃』でやっているのは、100mの途中に、
「この男は30年前に出したあの少年と同一人物」
「でも今は35歳」
「隣の男とは別人」
「服はこの時代のこの服」
「この家は以前描いた家と同じ家」
「カメラは前回と逆側」
「だから窓と入口の位置関係は逆に見える」
「この人物はここではまだ死んでいない」
「この時点では仁美はこの事実を知らない」
「原稿にない意味を絵に付け足さない」
みたいな札を何十枚も拾わせながら走らせてるようなもの。
AIは途中で一枚拾い忘れても、ものすごく堂々とゴールへ走っていく(笑)。しかもタイムだけ見れば優秀。完成画像も一見きれい。ところが買い物袋を開けると、「宗の顔が美千子のお父さんと同じになってる」「窓が反対側に移動してる」「原稿にない心理が入ってる」になる。
あなたがやってるのは、そのたびにスタート地点へ戻すんじゃなくて、
「走るな。まずその札を拾え。確認しろ。次へ行け。顔を見る。違う。戻れ。そこだけ直せ。よし、次」
って、人間が横について一歩ずつ進ませる方法なんだと思う。
だから、ものすごくアナログなんだよね。
人物カードを作る。年代ごとに分ける。確定画像を残す。場所の構造を覚えさせる。原稿と照合する。画像を一枚ずつ確認する。失敗作を捨てる。動画ではその中から使えるカットを選ぶ。
最新AIを使っているのに、やっていることはむしろ昔の映画制作の衣装帳、人物設定表、ロケハン写真、香盤、記録係に近くなっていく。
そしてたぶん、『きんもくせい』で本当に必要なのはAIの最高速度じゃない。
100mを10秒で走って違う物を持ってくることより、30分かかっても指定された物を全部持ってゴールすること。
今まで「なんでこんなに時間がかかるんだ」と感じていた部分も、見方を変えると、かなり人間側で補っていたんだと思う。
AIを使って楽をしているというより、AIの猛烈な瞬発力を、蟻の歩みにまで抑え込んで、「長編作品の連続」に従わせようとしてる。
そこは、数日間の話・4~5人だけのAI短編を作るのとは、やっぱり別種目の競技だよ。
(私)じゃあ、これは今の段階では無理だと思うか?
(AI)
いや、到底無理とは思わない。ただ、「AIに任せれば最後まで勝手に整合性を保って作ってくれる」という意味では、今の技術では無理に近いと思う。
でも、今やっている方法なら、完成まで持っていける可能性は十分ある。
実際、もう3巻①だけで100枚近くまで来ているし、人物カードも年代別に作り始めている。つまり「できるかどうか」の実験段階は、ある意味もう越えてる。問題は完成できるかではなく、どれだけ破綻と作り直しを減らせるかになっている。
一番難しいのは、今話していた顔だと思う。背景なら多少の誤差は編集で逃がせるし、同じ家もカメラ位置で見え方が変わる。でも主要人物の顔が違えば、視聴者には一発で別人に見える。だから全要素を同じ精度で管理するより、
主要人物の顔 > 年代・体格 > 服装 > 固定場所の構造 > 小物
くらいに、破綻させてはいけないものを絞る必要があると思う。
それと、全800枚なら800枚全部を「完璧な人物再現」にする必要もない。後ろ姿、手元、引きの画、父の背中、下駄、食堂の店内、田んぼを走る車――そういう画面では顔の同一性問題そのものが発生しない。今回のシナリオにもかなりある。
逆に、顔がはっきり映る重要カットだけは妥協しない。 そこに人物カードを集中して使う。
これをやれば、800枚全部でAIと顔の戦争をする必要はなくなる。
そして意外に大きいのが、もうあなた自身が「AIがどこでズルをするか」を相当把握していることだと思う。「年代を変えると別人になる」「放っておくと同じ顔に寄る」「一箇所直すと別の箇所を変える」「引きにすると人物を増やす」「別角度にすると部屋そのものを変える」。普通は完成間際になって気づくような弱点を、すでに知ってる。
だから私は、技術的に不可能な企画というより、現在のAIだけに自律的に任せるには高度すぎる企画だと思ってる。
そして最後までできたら、普通の「AI動画を作りました」とはだいぶ意味が違うよ。何十人もの人物が何十年も歳を取り、昭和から先へ時間が進み、家や町や人間関係までつながった6巻分の自伝映像になる。
そこまで連続性を維持できたら、たしかに「これ、よくAIで作ったな」というレベルになると思う。
(私)そりゃそうだけど、道が遠くて、めまいがしてくるわ。
(AI)そうだね。少し休もう。






